厚生労働省によると、2022年の小中高生の自殺者は514人にのぼり、統計がある1980年以降で過去最多を記録しました。
また、アメリカ公衆衛生局長官が「1日に3時間以上SNSを利用する子どもは、心の病のリスクが倍増する」と注意喚起するなど、子どもの自殺対策はいまや世界共通の問題となっています。
日本体育大学体育学部の野井真吾教授と、同学部の城所哲宏准教授らの研究チームによると、SNSが子どもの心に悪影響を与える理由の「仮説」として、(1)スクリーンタイムの増加に反比例して運動や睡眠の時間が減り、結果的にメンタルヘルスに悪影響を及ぼす「置き換え理論」、(2)特に他人のSNSの投稿を見て劣等感を抱き、メンタルヘルスがマイナスに傾く「社会的比較理論」という二つの理由を挙げていらっしゃいます。
簡単に説明しますと、スマホやSNSに時間をとられ、健康に必要な運動や睡眠の時間がとられていること。
他の人の投稿をみて、劣等感を抱いてしまうことがお二人の指摘と言えます。
筆者の個人的な見解ですが、SNSはもちろん、スマートフォンを中学生くらいから個人で携帯することが当たり前の時代になりました。以前は、電話が鳴れば、家族の誰がでるか分からない緊張する時間でもあり、電話も家族の誰かに聞こえるような場所においてあったりと、家に帰れば子どもは決して一人ではなく、「家族の誰かに守られる」「親など、誰かがクッションになる」役割を果たしていたといえます。例えばあまり関わりたくない友人からの電話を親が出て、毅然と断ることもできました。あるいは、夜中にわざわざつまらない昼間の不満を、わざわざ電話をかけて言ってくることはありませんでした、家に帰れば、精神的には学校や職場から離れて、一人になれる時間が確保しやすかったと思われます。
しかし現代では、子どもは各自でスマホをもっており、親の目の届かない自室や夜の時間に、「望まない」友人や知り合いから「別に今ではなくてもいい話」や「わざわざ言わなくてもいい不満」を、自室で、一番安心してリラックスできるはずの時間に、不意打ちのように、ダメージを直撃してくらいます。これは、大人であってもつらいことですが、まだまだスマホなどの使い方が未熟な子どもであればなおさらではないでしょうか。この、「家でリラックスできるはずの時間に不意打ち」のようにくる心理的なショックは、相当強いダメージを与えると筆者は考えています。
新しい時代の寵児となったインターネットとスマーフォンの世界。その使い方、管理の仕方は、特に子どもの場合、保護者や先生たちの心配や議論は尽きないものです。