京都新聞の社説より。
文部科学省の推計によると、きたる2040年の大学入学者数は22年に比べ12万人少ない51万人。現在の総入学定員62万6千人を維持すれば、充足率は約8割に落ち込むとのことです。過半数の大学で「既に」起きている定員割れは経営悪化に直結し、経営破綻や撤退する大学が増えるだろうと記事では指摘しています。
ここからは持論ですが、大学に定員充足率や、定員に達していない大学や学部が「現在は」過半数です。しかしこれは、定員に「1人でも」届かなければ未達成となりますので、定員に対してまるで届かないガラガラな大学もあれば、ほぼ埋まっている大学もあるわけです。もう25年も前から、全入時代だの、地方の大学からつぶれるだのと言われ続けてきましたが、不思議なことに大学と学部は倍増し(短大は激減しましたが)、募集を停止した大学(つまり閉鎖した、つぶれたと表現できる大学)は、毎年あるものの、片手の指で数えられる程度でしかありません。大学の生き残りをかけた底力は、それほどすさまじいものがあるのかもしれません。
他方で、学生集めに苦戦する大学がよくやるやり方として、これまで専門学校がやってきた医療などの国家資格が取れるような資格教育や職業教育でしょう。医療の「い」の字もなかった大学が、急に看護学部を設立したり、公認心理師学科を設置した例があります。
他に、外国人留学生を入れる方法もあります。一部の大学がこれを悪用し、大きなニュースになって印象があまりよくありませんが、地方の大学では、ある学部が全員ベトナム人だったりと、もはや日本語による高等教育が成り立っているのか疑問になるほどです。
さらに力を入れているのは、リカレント教育やリスキリングと呼ばれる、社会人の学びなおしやスキルのプラスアップを狙った教育でしょう。対象は主に日本人の社会人ですが、現代の社会人は仕事が忙しすぎるのと、お金がないので、そう簡単な話ではありません。
産業カウンセリングの会社のブログで何を語りだしたのかと思われるかもしれませんが、こうした大学教育の現実と、そこから排出された社会人の現実、それがメンタルヘルスの現場に出てくるからです。何でもいいから学生をかきあつめる大学が全国の半数以上、その学生のレベルはそう高くないでしょう。人手不足で少しでも新入社員が欲しい会社も、選び方の部分では大学と同じ苦労をするでしょう。
実際に入社してみて、大学のように座っていれたば講義が進んでいくように、座っていれば仕事が進めばいいですが、さすがに仕事はそうはいきません。ここに、大きな解離と問題があるのは、もうおわかりいただけたでしょう。産業カウンセラーがカウンセリングすることはもちろんですが、社内そのものの仕組みの在り方から、大きく変えていく必要がある時代といえます。