大阪大学大学院教授の野坂祐子氏による学校に必要なTIC(トラウマインフォームドケア)についての記事が、大変興味深い内容だったので紹介します。
そもそもトラウマとはストレスの一種ですが、主に3つの特徴があるとされています。1つ目は、自分でコントロールできない体験である。2つ目は、恐怖や衝撃が大きいこと。3つ目は、普段の対処法が通用しないこと、とされています。
学校の生徒に見られるトラウマによる影響とは、たとえばトラブルとして目立つのは、過覚醒(興奮)による落ち着きのなさ、多動、話を聞かない、攻撃的な言動などがあります。例えば、家で暴力を振るわれている子が、友達の何げない言葉に反応して怖くなり、いきなり怒ったり友達を突き飛ばしたりしてしまうことがあります。
虐待やネグレクトを受けている、保護者のDV(ドメスティックバイオレンス)を目撃しているなど家庭が安全でない場合や、学校や地域でトラウマになる出来事(性被害や暴力被害、事件、事故など)があった場合、子どもはつねに人の目を気にして気配を察知するような警戒モードになるのです。こうした警戒モードを過覚醒といいますが、過覚醒の子は叱られるとますます行動が悪化していきます。
また、腹痛など体の不調になってあらわれるケースも一般的です。大人や先生が、が子どもの話を聞かずに「仮病じゃないか」などと言ってしまうと、ますますトラウマが見えにくくなります。
大人の顔色を気にして頑張っていい子になってしまう子も、見過ごされやすいそうです。こうした過剰適応の子たちは、思春期以降に不調を訴えることがあり、リストカットや過量服薬といった自傷行為で苦痛をなだめながら過ごしている子も多いとのことです。
家庭での性的虐待や身内以外からの性被害による性的トラウマにより、ほかの子に同じことをしたり性的な言動が増えたり、思春期以降に再び性被害に遭うような行動を取りやすくなることもあります。また、性的トラウマに限らずさまざまなトラウマは、とくに男児では他者への加害につながることがあります。
トラウマのケアというと、命にかかわるような重大な感情的ダメージを受けた時(災害や事故など)を思い浮かべる方が多いかと思います。
しかし野坂教授が指摘されるように、日常の中に潜みこむトラウマになる得る出来事、それが学校現場でどのような形になって現れるのか、先生や大人はそれを理解する必要があり、どう対応するかも、これまでとは大きく異なる視点で変わっていくでしょう。
大変興味深い記事でしたので、ぜひご一読ください。
https://news.yahoo.co.jp/articles/4508b3b58941049f3f3075fdd574b9f3f89423f8?page=1